1998 ネパール(7)

by ハッチョ

カトマンズの商人【其の二】
「シャチョウサン、シャチョウサン」今度はなんだろう。

「白檀の木の‘たて笛’30ドルで買ってくれ」少年が笛を吹きながら、彼もまたカニ歩きでついてくる。
25ドル、20ドル、 「確かに白檀の香りはする」
15ドル、10ドル  「音もでてるし、どうせ土産も要る」

つい言ってしまった 「10ドル(1100円位)なら」

「まいどおおきに!」そのうれしそうな顔を見れば、言葉はわからなくとも浪花商人よろしく、彼がそう言っているのは間違いない。
一緒に歩いていたTが「日本円で1000円でも売るんちゃうか、どや」
いつのまにか、買う方も浪花商人のようになっている。

(悲しいかなこの時我々二人は日本円1000円は、ネパールの貨幣価値でいうと2~3万円の値打ちがあるということをすっかり忘れていた。ガイドのラメッシュ君は心得たもので、そばにいても何も言わない。赤塚不二夫じゃなjけど「それでいいのだ」)

「OK おおきに」
全く躊躇することなくTからお金を受け取った彼と目が合った。

Tより高い買い物をさせられた私に、こぼれるような笑顔で再び釣糸をたらす。

「あなたはとっても良い人」(当たり前だ、ここが日本なら差額を返してもらうところだ)
「高く買ってくれて私はうれしい」(そりゃそうだろう)
「だから私もあなた喜ばしたい。」(やはり同じ人間、いいところがあるじゃないか)

私は期待に胸を膨らます。
私を出し抜いたつもりのTも横で聞き耳を立てる。

「喜んでくれ、あなたには特別にこの笛を3本10ドルで売ってあげる。どうだ嬉しいだろう」

思わずズッコケそうになった。
底抜けに明るい顔でこの図々しさ。日本人にはまねのできないカトマンズの商人魂は尊敬に値する。

「2人がさっき買った笛を返すからその3本10ドルの奴をくれ」
心の中で叫ぶが、悲しいかな口に出して言えない。日本人は”シャチョウサン”なのだ。

カトマンズではいい香りだと思った白檀の香りが、日本に帰って家族に見せると「クサイ!クサイ!」と即座にお蔵入りになった。私も嗅いでみたが自分の鼻を疑った。

それ以来、私が旅行に行く時は「お土産買ってきたらいかんよ」というのが妻の見送りの言葉になった。

 

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