思い出

by 還暦爺

もう60年も生きてきたのか・・・もう充分生きてきたような気もする。
ということはもういつ死んでも良いということか?
自問すれば・・・・・「フーム、、かもしれんなァ。こればかりははっきりとは判らん!」

その昔小学4・5年生のころ、友人達とかくれんぼしていて、校舎の階段下にある物置に隠れた時のこと。真っ暗な中、床に座り込んで息をひそめていたら何やら指先に触れる物がある。厚さ2~3mmの板状で片手くらいの大きさ。片面はつるつるしていてもう一方の面は少しざらざらしている。
暗闇の中で閃いたのは「あ、レコード盤の割れたやつ!(今の子供達はレコード盤なんて知らないだろなあ。昔はそこらじゅうに真黒なレコード盤が一杯あった。よく道端になど欠けらが落ちていたものだ)」その割れたかけらが落ちているのだろう。

身動きもせず隠れている手持無沙汰もあったのだろう、私は暗闇の中でそのレコード盤のかけらをさらに半分ほどに割った。
「痛っ!」幸い深くはなかったが手のひらが切れ血が流れる。
レコード盤のかけらと思い込んでいたのはスリガラスの破片だった。なぜ安全なレコード盤と思い込んだのだろう。迂闊であった。

やはり小学校高学年のころ、担任の先生がホームルームの時に注意事項として話してくれたこと。
「君らと同じくらいの男の子が近所の工場に忍び込んで遊んでいた。そこに栓をした小さな瓶(かめ)のようなものがあって中を覗くとオレンジ色の液体が入っている。よくお店で売っているオレンジジュースとそっくりなので、彼は一口飲んでみたんだけどそれは猛毒の青酸カリで彼は死んでしまいました。君たちも気をつけて判らないものを口に入れないように。(工場なんかに忍び込まないこと)」
この話がたいそう怖くて今でも時々記憶の端に浮かび上がってきます。

ガラス板をレコード盤と勘違いして素手で割って怪我をした自分は、青酸カリをジュースと思いこんでしまった悲しい少年と重なり、死んだ少年は自分だったかもしれないと不安と恐怖に震えていたような気がする。

人間の思い込みとは不思議なものである。いや自意識(自分)こそ思い込みにしか過ぎないのではないか?とすると人間とは愚か者の異名かもしれない。

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