フィリッピン 1997(2)

by ハッチョ

「マニラ」 南国のホテルの朝は、甘い果実の匂いと 蠱惑 的な花の香りがないまぜになって、エキゾチックそのものである。

朝食後”ニーノ”の旅行会社が用意した運転手付きの専用車で、今夜の宿泊地アニラオに向けて出発。

途中で”パグサンハン川”で観光。
ここは観光客をカヌーに乗せて上流にあるパグサンハン滝までを往復する。
途中にあるいくつかの浅瀬を超え、パグサンハン滝の大きな滝壺まで行って今度は川を下ってくるというコース。

観光客は3~4人ずつカヌーに乗せられ、エンジン付きボートが数隻のカヌーを数珠繋ぎで引っ張って行く。

やがて浅くなると各カヌーはガイドたちの手こぎで上流に向かう。
しばらくすると櫂でも進めないほど浅く急流になる。カヌーの底が川床にガリガリこすれている。

どうするのかと思っていたら、そこからはガイドたちの人海戦術。
彼らがカヌーを降りて、2~3人でカヌーを押したり引いたり持ち上げたり。
どうやらこの辺が一番の見せ所のようだ。

「カヌーがすんなり通れるように川底をさらえばいいのに」と思うがそれは余計なお世話。これは昔の大井川の河渡し、便利にしたら彼らの仕事が無くなるのだ。

途中に休憩所があるのだが実はこれ、観光客が休むところではない。押したり引いたり持ち上げたりで体力を使いきったガイドたちの休憩所。

ここまで来ると彼らは「疲れ切って何かエネルギーを補給しないと動けない」と主張し始める。
そう彼らはカヌーのエンジン代わりであって、ここはガソリンの給油所の様なものであるらしい。
彼らのガソリン「焼肉や焼き鳥、コーラにジュース等」を売っているのだが、どうやら売り手は皆ガイドたちの家族の様である。(嫁さんが亭主に飯を食わせているようなものである)
和気あいあいと給油しているその費用は観光客が負担。めでたしめでたしということで上手く生活が成り立っている。
ということで、「本物のエンジンで走れるようにしては」などというのは日本人の浅知恵です。

やっとたどり着いたパグハンサン滝では、希望する観光客をイカダに乗せて滝壺のすぐ近くまで連れて行ってくれるが、みごとにずぶ濡れになる。

他の観光客がクシャクシャになっているのを見ていながら、それでも乗ってみたいという好奇心旺盛なのがどのグループにも必ずいる。だからイカダは結構繁盛している。
陸で見守る連中は大声でずぶ濡れになる仲間を囃し立てるが、滝壺に落ちる水の轟音で彼らはどれほど悪口を言われようが全く聞こえない。嬉しそうな笑顔でクシャクシャになって戻って来る。
(左はパグサンハンの滝つぼ)

帰りは同じルートで急流を下る。深く緩やかな流れになるとエンジン付きのボートがやってきて引っ張ってくれる。

快調に走っていたボートの船足が急に遅くなった。あれと思ってると観光客の乗ったカヌーに色々な土産物売りの小船が群がって来る。
初心者にはどうにも身の置き所がないような時間である。高くはないのだろうけど必要でないものを「買うまでは逃がさないよ」といった勢いで迫ってくる。日本人は上手く断れない。

平気な顔をしているのは”ニーノ”と”御大(先生)”だけ。
さすがである。ニーノはツアーコンダクターもしている専門家なので慣れているが、御大の場合は、笑顔で目を細めて「ウン・ウン」といってればあまりしつこく迫ってこない。

太平洋戦争で戦死した米国軍人墓地などにも寄りながら、今夜の宿泊地「アニラオ」に向かう。道すがら眺める人達の風景が妙に懐かしい。
一日の仕事を終えた大人たちは、道端に並べた椅子に上半身裸で座って、ゆったりと暗くなるまでの時間を楽しんでいる。

日本もかつてはこうだった。

暗くなり「随分走ったな」と思う頃アニラオに着いた。ホテル「アクアトロピカルリゾート」に足を踏み入れた我々一行を歓迎する横断幕が眼に飛び込んでくる。

WELL COME ”YOGI ●● & THE PARTY”

皆異口同音 「”YOGI(ヨギ)様ご一行”ってなんや?」
”ヨギ隊”の名称がうまれた瞬間である。

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