ドロー(4)

by ハッチョ

相手の手札を見てニーノの動きが止まった。

ニーノの顔は良く見えないが相手の顔つきからすると、
どう見ても彼の”引き分け”かそれ以上ではないのか?

しかしニーノも只者ではない。動じる気配はない。
ギャッと言わない、立ち上がらない、敬礼もしない。
何事もなかったようになにやら楽しそうに話している。

ここからは私達の想像である。

どうやら二人で、微妙な優劣を競うために穏やかに談笑しているのだ。
滅多にない階級証同士の優雅な闘争の後、
ニーノが得意の英語で五分五分かそれ以上に持ち込んだのだと思う。
ニーノが立ち上がり笑顔で握手をして別れる。

トッチャンと私は何も言わない。ニーノも言わない。

そりゃあそうだ。
どちらも”ギャッといって立ち上がり敬礼する”事はなかった。
引き分け、ドローである。
つまりこのいたずらは不成立。何も起こらなかったのである。

フィリッピンのビール・サンミゲールはことのほか美味いのだが、
あの時だけはニーノには少しほろ苦い味がしていたのか・・・・・?

いや、底抜け・そこのけ「ニーノ」に限ってそんなことはありえない。
こんなことでめげるタマではないのだ。痩せても彼も一匹狼の旅行者社長。
サアー!次のお楽しみと行こうじゃないか。

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