ドロー

by ハッチョ

その昔、高校の登山部だった生徒達と恩師がフィリッピンへ旅行に行きました。

大阪で旅行会社を営む最年長のニーノが、
「世界には美しいところが山ほどある。
僕は君らにその美しい風景を見せてやりたいんや」
精力有り余るニーノが発案したありがたい計画で始まった旅行会の時のお話。

旅先フィリッピンはニーノの庭のような「第二の故郷」とでもいうべき国。
「ニーノ」という名前も現地の人が彼を呼ぶときに使う愛称から来ています。

そこで、2こ上の先輩トッチャンとニーノと私の3人が、レストランの屋外テラスのような場所で、丸いテーブルを囲んでビールを飲んでいたときの出来事。

そこに、端正な顔立ちのフィリッピン人の男性が声を掛けてきた。
年の頃は我々と同じ位か。
どうやらニーノの顔見知りのようで、簡単な挨拶を交わして、その後少し離れたテーブルに一人で席についた。

「あんたらにええもん見せてやるわ」

ニーノが胸ポケットから日本の免許証入れくらいの、大きさも色・形も似ている、ごく薄い手帳のようなものを取り出した。 (続く)

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