排出権取引

by COM

環境問題を協議するCOP(条約国会議)16。何のことやらわからないうちにうやむやで終わってしまった。各国の思惑が入り乱れとても人類一丸となって環境問題に取り組むなんて夢のまた夢。このままでは自らの首を絞めるようなものなのだが、世界の排出量の半分を占める中国と米国が温暖化ガスの排出枠を設けることに反対しているようではいたしかたない。 そもそも地球が本当に温暖化しているのかどうか、問題提起した資料そのものにかなり疑惑がもたれてしまい、一時の危機感が薄れてしまっているようにも見える。そしてそれに輪をかけているのが怪しげな「排出権取引」であるのは間違いない。

この怪しげな排出権取引に日本はいち早く取り組み、元首相は「温暖化ガス25%削減」というとんでもない目標を掲げてしまったが当の本人はもういない。

以下は元首相のいた2009年当時に書いた排出権取引についてのコラムを再掲します。

排出権取引。つまり企業の温暖化(炭酸)ガスの排出量を上限規制して、排出量がオーバーする企業はどこかからその分を買い取らなくてはならない(キャップアンドトレード;C&T)ということらしい。

実はもう一つ別の方式(ベースラインアンドクレジット)があって、温暖化ガス排出量を削減させた企業にその分クレジットを発行するというもの。そのクレジットを支払うのはその国自体が税金かなにかで払わなくてはならないシステムで、私などこちらの方が実際的だと思うのだがあまり話題に上がらない。なぜなら”日本からお金を踏んだくれないから”ではないかと思っている

今世界はC&T方式の温暖化ガス排出規制を勧めようとしていて、東京などはこの4月から東京都として排出権取引を行う。そのほかにも国内でこの方式で炭酸ガス排出量の削減に取り組んでいる国もあるようだ。しかし排出権取引を国際的に行うには余りにも問題が多い。つまり非現実的な制度にみえる。

理由は多い。まず温暖化ガスの総量規制をどのように各国に分配するかで大いにもめるだろう。
C&TのC(キャップ;排出総量)どうやって決めるのだろう。

鉄鋼生産一つとっても日本のようにすでに効率よく生産する技術を開発している国と非効率で同じ生産量でも日本の何倍も温暖化ガスを排出する国の間で公平な調整が出来るのだろうか?
ことは自国の産業の問題である。それぞれの国が自国に有利になるよう主張する。アメリカや中国がいい例だ。アメリカは未だ温暖化ガス削減目標を設定する京都議定書を批准していない。中国は削減目標を決めるための基準データを自分の都合のよい数値に置き換えている。
世界の温暖化ガス排出量の半分近くを占める米中両国がこの有様では先が思いやられる。
仮に総量が決まって国別の上限が決まったとして今度は国内の産業にどのように振り分けるのだろう。想像もつかない。企業全部を国営化にでもしなければ決めようがないのでは?
(しかし日本国内だけなら何とか折り合いをつけて決めるかもしれない。)

その次にもし日本がオーバーした分を後進国から買い取るとする。
当然日本は買い取った分余計に温暖化ガスを排出する。その為に買ったのだから。
では日本に売ってお金をもらった国はどうするか?
本来は排出する予定でなかった温暖化ガスでもらったお金を使ってを温暖化ガス排出すれば、排出権取引以前より温暖化ガスの総排出量は増えるのではないか?

実はその為ここに一つの規制を掛けている。
“グリーン投資スキーム”というのがあり、「排出権取引で得たお金の使途は環境問題対策(グリーン投資)に限定させることで排出総量を守る」ということのようだ。しかし近代化を目標とする国が資金を得て本当にグリーン投資をするのだろうか?それとも本当に買い取る先進国の意を受けて、グリーン投資で後進国のままに甘んじるのだろうか?
さらに基本的な問題として、総量規制に各国の人口や国土面積が反映されるべきではないのだろうか。人間は生きている限り温暖化ガスを吐き出し続ける。規制の対象になってもおかしくない。
どうしても、排出権取引を実施するなら、前提として同じ条件で始めなければ不公平です。
つまり非効率的に温暖化ガスを排出している国はまず日本と同程度に効率化するか、そのように仮定とした時の数値を基に国別の総量規制をする。さらに人口に合わせて一人当たり排出量を計算しそれが各国同じ数値になるようにするというのが当然ではないのでしょうか?

まだある。排出権の価格を世界何ヵ所かの”○○機構取引所”という市場において決定すると言うが、なぜ排出権の価格を市場で決める必要があるのかだれか説明してほしい。
原油がアメリカのウエスト・テキサス・インターメディエイト(WTI)というごく小規模の市場で決められ世界中が右往左往させられたことはごく最近のことで覚えている方も多いだろう。
排出権に市場性を持たせ新たな金融商品に仕立て上げ、その取り引きで利益を得ようとする何者かの意向が働いているような気がします。
当然排出権の価格が安くなれば余計に排出権を買って温暖化ガスの総排出量は増える。逆に高くなれば温暖化ガスの総排出量は減るのだろうと想像する。

「市場で排出権の価格が上下し、それにより温暖化ガス削減への取り組みが変動する」なんてことは本末転倒も甚だしいのではないのか。温暖化ガス削減はその程度の取り組みでいいのか?

そもそも、温暖化ガスなんて目に見えないものに総量規制を掛けて削減やら取引やらすることは、その検証が極めて困難なことに思える。一国ないしごく緊密に連携する限られた地域でならば、可能かもしれない。その場合でも実施域内でのゆるぎない信頼関係がなければ、目に見えぬ”温暖化ガス”の排出権取引なんてあっという間に”煙”のように雲散霧消してしまうに違いない。
我が国の首相の排出権削減目標は何処から出てきた数字か知らないが本当に日本にとっていいことなのか? 米中は本当に実質的排出削減に取り組むのか。日本は彼らにそう要求しているのか?
日本はあなたの政権以前から充分に国際貢献をしていることを世界中が知っている。
ご自身の顔を立てるだけの八方美人的政策(性格)発表でこの国を破滅させるのだけはやめてください。
今からでも遅くない。「排出権取引に頼らず、日本は独自の温暖化ガス削減に取り組みます」いや「世界に先駆けて取り組んでいます」と云ってくれないだろうか。

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